宵に入り、最終下校を報せるチャイムが学校の敷地中に鳴り響く。
その中、電気が消された廊下をライトで行く先を照らしながら各教室の戸締まり、電気
の確認、居残っている生徒の追い出し作業を教員1人で行う。

 初冬にもなると灯りがなければ校舎中が闇に呑み込まれる。まして今年は例年にな
い程寒さが厳しいからか、居残る生徒は皆無に近かった。
見回り最後は高校3年の教室が鎮座する階。そこに着くと奥の教室から灯りが漏れていた。
(あそこはA組)
受験間際の3年、まして特進クラスが電気を点けっぱなしとは何とも珍しかった。順に
クラスを見回り、灯りが煌々と点っているA組まで来る。受験間際で疲れているのだろ
うと仕方ない気分で、それもまるで母親のような気分で溜息を零して扉を開き教室に入った。


「お疲れさん、ミリィ」
入った途端に声を掛けられその方向に顔をやると生徒が1人、脚を机に乗せて椅子に
ふんぞり返った座り方でとても楽しそうに片手をヒラヒラ振っている。

「最終下校時間よ、早く帰りなさい」
「事務的だなぁ、ひでーの」
「当たり前よ、親御さんが心配するでしょ」
「こっちは先生の心配してあげてんのによ」
「心配してもらう筋合いはありません、それから先生には敬語」
「こぉんなイタイケデ可愛イ生徒の気持ちを無下にするんですかぁ先生」
「いい加減にしなさい、エルスマン君!」
「ディアッカ、“エルスマン君”じゃなくてディアッカ」
「あのねっ、」
「彼氏に振られちゃったんでしょ?」

 妖艶な笑みを見せられる。彼は立ち上がり、未だに入口で立ち止まっている教師の
前に立つ。年下のまだ十代の生徒と言えど身長は女である教師のそれをとうに越し
ている。それを身近に感じて彼女は顔をムッとさせた。
ほんの少し前までは当時の自分の肩にも満たない身長しかなかった小生意気な隣家
の餓鬼だったのに、と思考が巡る。
「だから言ってんじゃん、俺にしなって」
「生徒に手を出す教師がどこにいるのよ」
「これから、でしょ?」
楽しそうに笑み、啄む程度に唇を奪う。呆気に取られて教師の仮面をすっかり取り外し
ている幼なじみに一層笑んで、己の鞄を肩に担ぐ。
「んじゃ、これから毎日出迎え宜しくねミリアリア」

 

 

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(17『ディアミリ・学園生活編』)2008/02/04


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