土や水、光のないこの闇の世界で
生きていけるものは存在しない
(珍しい…)
この艦によっぽどの用がない限り来るはずのない
キラとラクスさんがいた
周りにはAAのクルーがいても、
二人だけの空間が壊れることなくとても楽しそうに話している
いつも絶えず笑みを浮かべるラクスさんの本当の笑顔がどういうものか
初めて見た
きっとキラだけに見せる特別なもの
花のように綺麗で、見ているだけで魅せられる
横顔だけでこうなるのだから、正面から見たらもっと綺麗なのだろう
幸せそうに笑む友人がいてほっとした
「よかった…」
「何が“よかった”んだ?」
慌てて振り向けば、やはりここで見るのは珍しい人物が
不思議そうな顔をして立っていた
「カガリさん…」
「成る程な」
食堂で掻い摘んで話をした
ひどくキラが苦しんでいた時期、そして今に変化できたこと
詳しくは言えなかったけれど、カガリさんにも何か思い当たる節が
あったらしい
「色々あったからな、ラクスがいて本当に良かったよ」
「そうね」
花のように笑ったラクスさんの横顔を今一度思い起こす
すると昔の自分と彼の記憶が甦ってきそうになった
あんな風に笑えていた時期があっただろうし、懐かしかった
もうあの頃には戻れない
失くしてしまったから
「ミリアリア?どうした、大丈夫か…?」
感慨にふけ始めてしまった時に、橙の眼を感じた
それに笑って答える
「…私ね、カガリさんもいて良かったと思う」
「な、何だ?急にっ」
目の前の彼女の反応にくすくす笑いながら思った
あのアスラン・ザラにはこの彼女がいる
ラクスさんとは違う、花のように笑ってあげられる人
元気付けてあげられる真っ直ぐな女の子
「そっ、それを言うならミリアリアだってそうだろ!」
「え?」
「私もミリアリアがAAにいて、本当に良かったって思ってるぞ」
どういう、イミ?
「ミリアリアがいるからあいつが変われたんだろ!?」
アイツと言われて出てくるのはあの皮肉屋の顔
何でそれであの男の顔が出てくる!?
「あ、あいつって…ちっ違う!」
「どう違うんだ?私はそう聞いてるぞ」
「だからっそうじゃなくて、…っ」
顔に血が集まってくるのがはっきりと判る
さっきから自分でも何を言って良いのか分からず、
彼女との会話が成立していない
「な〜んか楽しそうだな、お姫さんたち」
いきなり割って入ってきた声におもいきり振り返って後悔した
いつの間にいたのか、座る自分の真後ろにその男が笑って立っている
「ディアッカ、お前いつの間にいたんだ」
私の代わりにカガリさんが聞くが、ん〜と生返事を返しただけで
ちゃっかり人の横に座った
「ま、そんな事はどうでもいいんじゃない?」
と、嫌な笑みを浮かべながらこちらをちらちらと見てくる
どうも楽しそうなのが癪に障る
「で?何の話してたの?」
全部聞いてたくせに、と言いそうになるのをぐっと堪えた
「あんたには関係ない、女の子同士の話よ!」
へ〜と、やはり嫌な笑みを向けて返事をする
「お前な〜、ミリアリアしか見て話せないのかよ」
「だってミリアリアさんは俺の花だからね〜」
気が付いた時にはその場から逃げていた
--------------------------------------------
(6『花』)2006/02/20・無印
何もなくとも男にとって女性そのものが花
閉じる