彼の海に還る



 久方振りの地上任務だった。
 地上とは言ってのもプラントを地上と言っていいものかどうかは 
 先の大戦で実際地球に降りて体感している身としては曖昧なもので。
 俺にとっては地上≠ニ言うと、どうしてもオーブの、それも
 海岸沿いを思い浮かべてしまう。


 寄っては引いていく波と砂浜の境界線。

 蒼のようであり、碧のようである水の塊がどこまでも続き、
 日の光を反射して所々輝いている景色。

 それを思い出すと無性に室内には居られなくなる。



 「何をしているんです」

 掛けられた声に応える代わりに振り返れば、
 予想通りの人物が渋い顔で立っている。

 「そろそろ雨の時間でしょ、濡れますよ」

 なんとも義理堅い、かといって全くもって心が篭っていない
 その口調ぶりを可笑しく思う。
 が、素直に笑うとその人間の気を逆撫でする事に繋がり、
 それが後々面倒くさい事限りない。加えて
 普段なら特に気にする事もなく、寧ろわざと逆撫でするのだが、
 今はそれを避けたかった。

 「時間までには戻る」

 それだけ言うと後は視線を戻し、手を振って話しを遮断した。



 「一体何がしたいのか全く分かりません」

 彼女は一人、自分の定められた基地に戻っていた。
 一応上にあたる人物、ディアッカ・エルスマンとの遣り取りに
 従った訳ではないと、自分に言い聞かせながらも
 隊長室に入った途端に思うままの事を口にしていた。

 「ディアッカの事か」

 「はい、わざわざ雨に濡れるなどと愚かな事を…」
 「いつもの事だ、気にするな」
 「いつも!?」

 若さ故か、そもそもの性質か、
 ある人物に対して己も同じ態度を、認めたくはなくとも
 取ってしまっているという似たモノを今目の前で見ているからか、
 イザークは苦笑を禁じえなかった。

 (まぁ、前者の2つだろう)

 だが今挙げられている奴の事なぞ
 気にしていては身が持たないというのは最近
 彼も知った。構うだけ、考えるだけ、非常に無駄なのだ。

 「プラントに居る時は、水面を見てるか
  雨が降る日は雨に打たれる
  戦艦内では地球を見るのが奴の日課だ」

 「…私には理解できません」
 「俺にも解らん」





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 2007/01/09・無印後・運命前

 あの瞳を思い出す
 (DM30題・30『ミリアリア・ハウ』と繋がってます)
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