何も知らずに有り難くもむこうから踏み込んでくれる。
 飛んで火に入る夏の虫、とはこの事か。そうでないにしても結局辿り着
 く結果は同じ。その先が懐でも腹でも鍋でもなく、

 塵箱

 だと気付いた時には既に意識から抹消されるとは露知らず。



 「あの子って本当に莫迦よね」

  何がそんなに嬉しいのか、女は満面そうでいて、それに加えて鋭利な
 顔付でそう言う。
  きっと女は平気で今悪口をたたいた相手の前では友人の顔を見せる
 のだ。だから同じような顔をして頷いた。

 



 彼女は本当に見る目がない



歪2

 




  女独特の金切り声で攻める相手を男は見つめていた。

  まるで自分が愛されているのだと勘違いしている女に少しの思い入れ
 もなく、本当にただ単に見ていた。

 その女とはそれなりの関係であったのを忘れた様に。

  男は相手の訴えが終わるのを見計らって別れの言葉を口にすると、
 先までは勝気顔だった女の表情が一変した。
 その変化にも男の表情は女の望むものに変わる事なく、逆に眼の温度
 が冷めたようになった。

 確かこの間の時もそうだったな

  何度この場面に至っても変わらない。それが男にとってつまらない事
 この上なかった。

 「泣く?喚く?」

 「好きな様にすれば良いんじゃない?」
 どうせ俺には関係ないし?

  鼻で笑って女の前から立ち去る男をただ夢中で女は縋り付く。
 それによって歩みを邪魔された男は、原因を侮蔑の目でもって見た。
  自分の服を掴む白い手を持つ女の顔ははっきり言って見れたモノで
 はなく、負の感情が綯い交ぜになったそれを余計にぐちゃぐちゃにして
 やりたくなる思いに駆られてしまう。

 「触らないでくれる?」

  それでも今最低限の優しさで女に声を掛けると、男の顔を見た女は
 わなわな震え出した。
 まるで恐がっているように。

 折角ない優しさを繕って言ったのに、言う事を聞かずに固まっている
 女に与えてやれる優しさを男は持ち合わせていなかった。
 
 「汚れるから触れんなよ」
  怒気を押し隠す事なくそう言い棄てる。
 そして服を掴んでいる白い手の首を対照的な色をした手で掴んだ。 
 その後にゴキ、と鈍い音が続く。
 
 間を置いて人らしからぬ叫びが部屋中に轟いたのは、ちょうど男が
 部屋から出ようとした時だった。


 

  部屋を出てしまうと静寂が男を包む。
 無機質で無臭な廊下の冷めた感じが彼には丁度良かった。



  ここにはもう訪れる事がない。
 そう思うだけで口元が引き上がるのが判る。
 そうして明日何食わぬ顔で彼女に声を掛けるのだ。
 自分の知り合いに何があったのか知らぬ彼女と、そ知らぬ振りをする
 自分を目を瞑って浮かべる。
 すると自然に普段見せる嫌そうな顔が出てきた。


 それが憂いに満ちた瞳を含む日が来ると想像するだけで
 男は舌なめずりをする。 

 じわりじわりと彼女の周りには誰もいなくなる。

 それを自分がしているという事は誰に言われずともしかと認知していた。 
 そしてその感覚だけが唯一彼に快感を覚えさせる事も。


 喜びに身が震え、体中に熱が灯る。

 

 こうなったのも全て、お前の所為だよ

 


 「ミリアリア…」

 



  誰もいない場所で静かに男はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

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2006/04/17・パロ

歪シリーズ第二弾
 前回以上に最低な人でごめんなさい。
奴は矛盾してても気にしません。とにかく自分の
行く道を邪魔しなければ構わない。そして元々
優しさがないのに、ない優しさ振り絞って
余計恐がらせます。<本人どうでもいいから

 ちなみにミリアリアの周りに誰もいなくなる
までエンドレスに続けます、ウチの黒い人は。

救われない<自分で言った、この管理人
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